NOKTON Classic 35mm

2019.01.30PHOTOGRPH and WOLF

SONY α7R2 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC 錆びた橋の写真

SONY α7R2 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

昔から重い荷物が好きじゃない。ペンより重いものは持たない文豪家のごとく、潔く持ち物は最小限に抑えたい。荷物が軽いと何でも楽しくなるし、逆に荷物が重いと何でもかんでも辛くなってしまう。もちろん実際にはスマホ1つ持ってどこへでも、というわけにはいかない。しかし持ち物も道具もできるだけコンパクトにしたいと考える文化系なよなよ写真撮りにとって、サイズの小さいライカMマウントのレンズはありがたい。ソニーα7R2にアダプターを介して取り付けてもさほどかさばらないコシナのマニュアルレンズVoigtlander NOKTON Classicは古いタイプのライカスタイルで、操作性も外観もライカのレンズにとても似ている。

僕がノクトン・クラシックをはじめて手にしたのは40mmで、いざ撮ってみると開放近くのヘロヘロっとしたニュアンスが気に入らなくてすぐに手放した。それでもどこか後ろ髪を引かれるところがあって今度は35mmを買った。開放は使わずボケが欲しいときにはF値をF1.7に絞って撮ると悪くないことがわかり日々愛用することになった。さらにカメラをマイクロフォーサーズのPEN-Fからフルサイズのα7R2に変えた後、そうか、このレンズはフルサイズで使ってこそ真価を発揮するレンズなんだと知る。35mmという画角も大いに気に入り、ソニーに合わせて同じノクトン35mmのEマウント版に買い替えた。Eマウント版は電子接点があり、フォーカスリングを回すだけでファインダーが拡大しとても便利だったけれど、やっぱり小ぶりなレンズが忘れられなくて35mm40mmをライカMマウントで買い直した。お帰り、ノクトン。レンズのコーティングはどちらも彩度低めのシングルコート。

Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC レンズの外観

SONY α7R2 / PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

普段使いも抜群にこなせる35mm。胃袋に入れてしまうものや、妻や犬たちの日常を頻繁に撮っているので、α7R2には基本35mmがついている。ヘリコイド付のアダプターのおかげで近くのものも難なく撮れる。キリッと撮ったり、モヤッと撮ったり、実に万能なレンズである。

Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC 日常のスナップ02

SONY α7R2 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC 日常のスナップ01

SONY α7R2 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC 日常のスナップ03

SONY α7R2 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

逆光での撮影で光の輪が楽しめるのもこのレンズの特徴だ。光源に対する角度や絞りで、光をコントロールしながら絵づくりを楽しめる。開放のF1.4にしなくても充分にボケて、構図やトリミングによっては50mmで撮ったものと区別が難しいほど。

Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC 横浜の朝07

SONY α7R2 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC 横浜の朝08

SONY α7R2 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

NOKTON Classic 35mm F1.4 VMは一眼タイプのカメラではなくレンジファインダー用のレンズだが、α7R2との組み合わせはとてもいいように思う。重さは約190g。サイズは小さいが、しっかりとした重量感はある。サイズ、重さ、質感も文句なし。ライカ風のヘリコイドレバーに使い慣れてくると、そこら中で見かけるゴムやプラスチック感満載なオートフォーカスのレンズなど、子供のオモチャに思えてくる。特に何も考えずにα7R2につけて写真を撮っていると、朝、昼、夜、室内、人、物、料理、風景と、この1本のレンズで全方位的にカバーできるんじゃないかと思ってしまう。仕事で映像撮影に使った時も、NOKTON Classic 35mmはいい仕事をしてくれた。小さくても役に立つ。そんなレンズだ。

Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC 横浜の朝06

SONY α7R2 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC 横浜の朝05

SONY α7R2 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

一般的にはノスタルジックと評されるファジーな味のレンズではある。開放付近での滲み、ボケのざわつき、像の流れ。そういうオールドレンズのような傾向が、甘くノスタルジックな雰囲気をつくる。僕の場合、撮ったままのものを良しとすることはほとんどないので、このレンズで撮ったものを現像でソリッドに仕上げるのが好きだ。やりすぎないギリギリのラインまで写真の湿度を奪って、カラカラに乾いた雰囲気にすることもよくある。

Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC 自分好みの現像01

SONY α7R2 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC 自分好みの現像02

SONY α7R2 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC 風景写真

SONY α7R2 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC

はじめてマニュアルレンズを使う人には、間違いなくこのレンズをお薦めしたい。カメラを選ぶ前にレンズを決めてからカメラ本体を考えるのもありだ。レンズに合わせるカメラは、なるべくコンパクトなものがいいと思う。ライカM以外ではソニーα7R2、無音のサイレントシャッターや手ぶれ補正が必要なければ初代のα7がお手頃だ。APS-Cやマイクロフォーサーズのカメラで使うと、レンズの中心をトリミングした写真になってしまうので、レンズの性格が半減してしまう。開放近くのF値では、周辺落ち、像の流れといった欠点は写真の四隅に表れ、そういった欠点はこのレンズの魅力でもあるので、できればレンズ全体を写真に収めるフルサイズセンサーのカメラで撮影したい。

その昔、オートフォーカスレンズが登場したばかりの時代には「オートフォーカスレンズを使いだしたら便利すぎてマニュアルレンズには戻れない」という現象があったに違いない。しかし、オートフォーカス時代に育った我々がマニュアルレンズの楽しさを知ってしまうと、逆に「もうオートフォーカスには戻れない」のだ。マニュアルレンズでしか撮れない絵があり、機械任せではなく自分の指を使って能動的にピントを合わせる歓びがマニュアルレンズにはある。Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SCは、マニュアルレンズの楽しさを僕に教えてくれたはじめてのレンズだ。「男は最初の男に、女は最後の女になりたがる。」なんていう言葉がある。そして多くの男は「最初の女」をどういうわけか必要以上に美化して記憶する生きものである。そんなこんなで僕は、今後もずっとこのレンズに特別な想いを抱き続けるのだろうか。

Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC 横浜の朝01

SONY α7R2 / Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 SC