失敗しない安全な道

2018.11.27

広角レンズ MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8 作例01

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

不安しかない日々は辛い。失敗したらどうしよう、クビになったらどうしよう、断られたらどうしよう。あらゆる不安は客観性を奪い、行動を促す筋肉を萎縮させ、新たな可能性を否定してしまう。誰だって何かしら不安はある、とよく言われるが本当にそうだろうか?

先日クライアントから、協力会社を決めるためにコンペを検討しているという相談を受けた。外注先を決めるために企画や技術を競合し、見積もりを競合する悪しき習慣である。僕は正直に言ってコンペというシステムが大嫌いだ。もちろん分野によっては有効な場合もあるだろう。僕のようなデザインというフォーマットがあるようでないものが対象な場合、数値化しにくいスペックが品質を決めているので、発注主が比較して精査するためには外注先と同等かそれ以上のスキルが必要で、しかも同じ品質を条件に比較できないため見積もりでの比較が難しい。受注が不確定なため外注先はコンペのための準備に多くの費用を割くことができない。リターンがあるかどうかわからない仕事に対して、やる気のないクリエイター、やる気のない企画、やめておけばいい一方的な提案が動くことになる。そして、安い方が採用される確率が高いという理由で、品質を下げたものが各社から提案されることになる。その提案を本来は精査することのできない素人が「いいねぇ」といって採用するのである。クライアントが喜んでくれたものが、目的の役割を果たしてくれるとは限らない。安くていいものを、という意向ではじまるコンペだが、決して「いいもの」は手に入らない。

思えば、いままで数えきれないほどコンペに参加してきた。勝ち取ることも多かったが、仕事にならないことの方が多い。コンペまでの足りない時間を徹夜で詰めて、憶測と推測の中で散々議論してつくり上げたものが、不採用になってもその理由は不明瞭。こんな不毛なことはない。コンペに勝ったら1億の仕事が入るよ、と言っても伝票仕事で1億入金されるわけじゃない。勝ったら1億分コツコツ働くだけだ。通常予算の1/10しかないが何が何でもあなたにやって欲しい、そう頼めれてする仕事の方が遥かに有意義だ。最近では話をくれる方や会社に特別な思いがない限りコンペはお断りしている。

コンペの相談を受けたクライアントには、コンペをせずに、小さい案件で仕事を共にして各社の仕事ぶりを判断してから外注先を決めたらいいでしょうと勧めた。よく探せば費用は安くてもいい仕事をしてくれる会社はあると思う。新しい外注先と仕事をするときに大切なのは、失敗を見込んでおくことだ。新しいブレーンが仕事をしくじったとしても、他のブレーンで取り戻せるだけの予算をみておけば、臆することなく新しいブレーンと仕事ができる。失敗をフォローできる余力がない場合は、はじめて仕事をする協力会社に大きな予算を委ねるのはリスクが高すぎる。失敗したくないからコンペをして比較検討する、それは実際には成功率を低くするやり方なのだ。

広角レンズ MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8 作例02

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8

仕事に限らず誰だって失敗などしたくない。だから僕らは失敗しない方法を必死で探すが、失敗を恐れるあまり間違った考え方をしてしまうことがある。本当は完璧で安全な道などどこにもないのに。何かに向き合うとき、必ずミスがある。どんなに細心の注意を払っても、うまくいかないことは必ずある。重要なのは失敗した後に巻き返せる何かを持っているかどうかだ。何かとは、経済力だったり、知恵だったり、気合いだったり、言い訳だったり、いずれにせよ、失敗したときに自分を守るものがない場合、本気で何かに取り組むことなどできない。

1番いいのは、成功するか失敗するかというゴールではなく、どんな結果になってもハッピーになれるゴールを目指すことだ。スポーツで試合をしても勝ち負けだけに焦点を当てていたら、試合に負けたときに自信を失うだけだ。何に焦点を当てるかで世界がまるで違ったものになるのは、写真だけではない。

広角レンズ MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8 作例03

SONY α7R2 / MINOLTA M-Rokkor 28mm F2.8